就業規則関連の訴訟例

<事例その1−A社事件>
ー就業規則の定めと懲戒解雇の有効性ー
労基法の改正で、就業規則に記載すべき「退職に関する事項」に、解雇の事由が含まれることになりました。

この解雇は、懲戒解雇や普通解雇(整理解雇を含む)等、すべての解雇が対象になります。
本事件は、得意先とのトラブルや職場秩序を乱したとして懲戒解雇された元従業員が、懲戒解雇の前提となる
就業規則は存在していないとして、解雇の無効および損害賠償を求めたものです。
最高裁は、就業規則を労働者に周知させる手続きを認定せずに懲戒解雇を有効とした
判断には誤りがあるとして、高裁判決を破棄・差し戻しました。

会社に就業規則があり、公開されているこを従業員に周知させること、また、どういう事由(行為)で
解雇になるのかを明確にする必要があります。

これまで、解雇に関するルールは明文の規定がありませんでしたが、解雇規定の制定に伴って、
@解雇事由の明示(労基法22条2項)
A就業規則への解雇に関する規定の明確化(労基法89条・施行規則5条1項4号)
が併せて求められることになっています。

解雇する場合には、退職の日以前にも、解雇予告の日から退職の日までの間においても、
従業員から請求があった場合には解雇の理由についての証明書を遅滞なく交付する必要があるとされ、
就業規則や労働条件提示書面(雇入通知書など)にも解雇に関する事由を銘記する必要があります。

また、解雇に伴い、どういう場合は退職金の支払いをしないかということも明確にすることも解雇・退職の際の
トラブルを防ぐポイントになります。

*A社事件(最ニ小判平15.10.10)―

<事例その2−B社事件>
ー退職金規定の重要性ー
採用時に60歳を超えていた高齢労働者の退職金支払請求につき、就業規則の退職金支給規定は適用されない
とした地裁判決が改められ、当該請求が一部認められた例があります。

この事業所は、就業規則作成時に適用対象を限定せず、正社員のみを念頭においていたために
多様な働き方の労働者を雇用するにいたり齟齬がでてきたため、判例のような提訴にいたりました。

就業規則作成時に適用範囲を明確にしておくこと、また新たな雇用形態の労働者を採用するに至った場合は、
就業規則を変更する、新たな雇用形態の労働者向けの就業規則を別途設ける等の
緻密な対応がトラブルを防止することにつながります。


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